プロジェクトタイトル
訪日旅行者をターゲットとするスポーツ参加の商業化によるコミュニティ開発:ゼネラルマネジャーの役割変容に着目したアクションリサーチ
研究ユニット
代表者
メンバー
プロジェクト期間
2019年5月16日 ~ 2020年3月31日
プロジェクト概要
本研究は,スポーツ参加の観光商業化によるコミュニティ開発への貢献可能性について、ゼネラルマネジャーの役割変容に着目したアクションリサーチを行い、現状と今後の展開を議論することを目的とする。
企画背景として、第一に、現在のスポーツ参加は、行政や競技団体のスポーツ普及推進を念頭に、生涯学習の枠組みで実施されており、多くの場合は年1回のスポーツ大会など、単発で、ルーティーンなイベントという特徴がある。つまり、参加者目線やダイバーシティに対応する対等な関係を基盤とするスポーツ参加機会ではない可能性がある。第二に、ブロックチェーン技術に代表されるP2P(peer to peer)を基盤とする社会環境変化がある。P2Pとは、複数の端末間で通信を行う際のアーキテクチャのひとつで、対等の者同士が通信をすることを特徴とする通信方式、通信モデル、あるいは通信技術の一分野を指す。つまり、P2Pを基盤とするコミュニケーション(SNS等)では、個人間のコミュニケーションは対等なものであることが期待される。 そこで、訪日旅行者が増加していること契機として、スポーツ参加を、住民同士のみならず、住民と旅行者、特に、訪日旅行者とのスポーツ交流?協働などコミュニケーション機会の創出ツールへと観光商業化し、コミュニティ開発に寄与する可能性を議論する。実際には、施設等の指定管理者となっている運営主体の事務局長が訪日旅行者を含むイベントをゼネラルマネジャーとして企画するための経営ツールとして、戦略マップやスコアカードの適用可能性を、アクションリサーチの手法で、ガバナンス、主体、方法に分類し、推進要因や阻害要因を導き出す。結果として、学術的には、観光学、スポーツ学、パークマネジメント、管理会計を融合した学際的研究の可能性を示唆する。また、社会的には、観光立国政策の下でニーズが高まっている観光目的地のコンテンツ豊富化や多様化への貢献可能性を示唆する。
実績?成果
プロジェクトの成果について,「eスポーツに関するセミナー等における情報収集」および「クリケット体験を活用したスポーツ参加に関わる実証実験」に分けて述べる。
1. eスポーツに関するセミナー等における情報収集
①eスポーツ市場の現状や規模を知るためにツーリズムEXPOジャパン2019において開催された「eスポーツの活用による観光振興シンポジウム」(2019年10月25日)に参加した。(担当:八島,キム)
②eスポーツに関わるネットワーキングのために第53回関西スポーツネットワーク交流会(2019年10月29日,研究メンバーの堀込氏が代表を務める特定非営利活動法人スポーツファンデーションが主催)に参加した。(担当:八島,堀込)
③動向に関わる文献収集 :「e-スポーツ五大陸白書2019(e-スポーツ白書)」などの資料を購入した。
※韓国におけるeスポーツの現状調査および視察を2020年に入り検討したが,COVID-19(新型コロナウィルス)の感染拡大などに配慮して中止した。
2. クリケット体験を活用したスポーツ参加に関わる実証実験
2020年度挑戦的研究(萌芽)に「多様な関係者による学習コミュニティ形成が運営方法の革新に及ぼす影響」のテーマで応募した(総額490万円程度,研究期間3年,メンバー:代表?八島,分担者?キム?ジェウク,広島大学,CTR客員フェロー)。また,客員フェローから堀込孝二氏(大阪国際大学,日本クリケット協会理事),長野史尚氏(九州スポーツ医療専門学校教員)が連携研究者として参加する予定である。実務では,東山善一氏(サービスクォリティ社),今津運動公園(福岡市,(株)九州グラウンドが指定管理者)の公園管理スタッフ(以下,公園管理スタッフという),佐藤宥斗氏(関西クリケット協会),宮地直樹氏(日本クリケット協会事務局長)と研究協力ネットワーキングを確立している。なお,挑戦的研究(萌芽)は中区分で分野が設定されているため,観光学区分はなく,代表者の専門分野との関係で,経営学区分に申請した。
以下,実態調査,実証実験の準備活動に分けて述べる。
①実態調査(1):関西エリアにおける実態調査として,貝塚市の進める『「クリケットのまち」づくり』プルジェクトに関連して,八島ゼミ4回生の藤川祐輝くんの協力のもとで,関西クリケット協会の佐藤宥斗氏を中心に現状に関する聞き取り調査や実際の活動等の視察を行った。また,佐藤氏から実証実験の講師役として助言をいただいた。(担当:八島,堀込)
②実態調査(2):東日本エリアにおける実態調査として,WEBを中心に二次情報を収集し,実際にアスリートとしてチームを構成している仙台大学等で視察を行った。また,日本クリケット協会や関東エリアの活動情報を収集した。(担当:八島)
③実態調査(3):実証実験ができる環境を作るために,九州エリアにおける実態調査としてWEBを中心とする二次情報の収集のほか,実際に今津運動公園における芝生活用のイベントの実施状況などについて,視察やヒアリングを実施した。(担当:八島)
④実証実験の準備活動:
(1) 計画立案:実証実験の計画立案を,今津運動公園において実施する方向で,サービスクォリティ社東山氏を通じて交渉し,公園管理スタッフの協力を得ることで合意することができた。重ねて,次年度を含めた計画立案のミーティングを行った。(担当:八島)
(2) 実施計画:東山氏に業務委託し,公園管理スタッフの協力のもと,実証実験のプレ調査としてクリケット体験イベントを計画した。しかし,2020年に入ってからの新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大に対応して,福岡市のイベント自粛要請により中止した。代替として,関西クリケット協会の佐藤氏の協力のもとで,研究メンバー,研究協力者,公園管理スタッフで,実際にクリケットを体験した。また,今後は新型コロナウィルスの鎮静状況を見ながら,2020年度内には実証実験を実施する方向で合意した。(担当:八島,キム,堀込)
3. その他
CTR研究集会に八島とキム氏が参加し,①科研費挑戦的研究(萌芽)への申請状況,②2019年度の台風被害を含む日本におけるクリケット普及の現状,③今後の実証実験の計画について,発表した。(担当:八島,キム)